ビットコインに代表されるデジタル通貨がますます注目を集めるようになりました。これらを支える技術の応用範囲は、通貨だけにとどまらず、契約書や不動産などの取引からIoT(Internet of Things)でやりとりされるデータの保証に至るまで、多岐に及びます。本カンファレンスでは、伊藤穰一がMIT Media Labで2015年5月に立ち上げた「MIT Media Lab Digital Currency Initiative」に参画したビットコインの開発メンバーを含む、世界有数のデジタル通貨の専門家を招聘して、今後の技術開発の動向やセキュリティ、ビジネスへの応用などについて議論します。
スピーカー
デジタル通貨の普及に向けた政策提言を行う非営利団体「Coin Center」を運営するJerry Brito氏や、オバマ政権下でホワイトハウスのSenior Advisor for Mobile and Data Innovationを務め、MIT Media Lab Digital CurrencyのDirectorに就任したばかりのBrian Forde氏などが講演します。また、ビットコイン開発の中心的存在であるCory Fields氏とPeter Todd氏が、ビットコイン開発の現状や今後について語る予定です。このほかにも、デジタル通貨関連の情報を発信するメディアとして最大手のCoinDeskを運営するJeremy Bonney氏などが最新の話題を紹介します。また日米における法規制など、デジタル通貨に関するビジネスに欠かせないトピックについても取り上げます。
ビットコインをはじめとしたデジタル通貨にまつわる政策課題に特化した非営利の研究/支援機関「Coin Center」の運営に携わる。George Mason Universityの非常勤教授を兼務。デジタル通貨について、これまでに米国連邦議会と州議会で数回証言台に立っている。現在も定期的に政策立案者向けの説明会や協議会を開いている。「Bitcoin: A Primer for Policymakers」(ビットコイン:政策決定者向け入門)の共著者で、ほかにもデジタル通貨の法規制に関する学術著書多数。Wall Street JournalやNew York Timesなどにコメントが引用されて注目を集めている。
Rakoku Holdings社のEntrepreneur Residenceとして、情報セキュリティーおよびFinTechに特化した事業開発を行っている。イタリアのインキュベーターiStarter SpA社のパートナーでもある。Mac OS Xのセキュリティーおよびスマートフォンの脆弱性に関する研究を、Black Hat、Qualcomm Security Summit、マイクロソフトのBlue Hatといった世界中のセキュリティ関連カンファレンスで発表している。Black Hat Review Boardの委員を務めるほか、「iOS Hacker’s Handbook」の共筆者でもある。また、世界的なハッカーコンテストであるPwn2Ownにおいて、2012年に準優勝したことで知られている。世界経済フォーラムのCyber Resilience Projectの協力者でもある。
Mario Gomez
CEO, QUOINE
セッション3 ビットコイン取引の最先端
大手銀行グループでCIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)などの要職を歴任。銀行およびITの分野で15年以上の経験を積む。2000年台前半から、Merrill Lynchの債券、通貨、商品先物に関するアジア地域のCTOを務める。その後、Credit Suisseの日本におけるCIOとして日本における全事業のITに関する責任者になった。同時にCredit Suisseのシンガポールにおけるグローバル開発センターの責任者を務めた。こうした業務を通じて、リスク管理、プライシング・トレーディングシステム、取引所、内部統制および規制といった様々な分野の知見を得た。University of Kansasのコンピュータ・サイエンス学部から学士および修士の学位を取得している。
Roger Ver
Bitcoin Evangelist
セッション4 パネルディスカッション デジタル通貨の長期的インパクトは何か
10年以上にわたりMemorydealers.comのCEOを務めた後、2011年始めにビットコインに巡り合う。この結果、memorydealers.comはビットコイン決済に対応した最初の大手事業者になった。同時に、ビットコイン関連のスタートアップに絞った投資家になった。また、さまざまな商品をビットコインで購入できる世界初のECサイトBitcoinstore.comを立ち上げる。この結果、小売店によるビットコインの採用を促進した。ビットコイン相場は、金相場や銀相場、米国の株式市場、米ドル相場に比べて今後2年間で100倍以上高騰すると主張していて、ビットコインに多額の投資をしていることでも知られる。また、Foundation for Economic Education(経済教育財団)に100万ドル以上に相当する寄付をしている。現在の投資先には、Blockchain、Bitpay、Kraken、Luxstack、Shapeshift、Purseなどがある。
Brian Forde
Director of Digital Currency, MIT Media Lab
午前の部 基調講演 デジタル通貨とは何か
10年以上にわたり技術、起業家精神、公共政策に関連する業務に就てきた。現在はMIT Media Labのデジタル通貨のディレクターとして、研究や影響力の大きな新たなアプリケーションの育成などを通じてビットコインに代表されるデジタル通貨の理解を深める活動をしている。MIT Media Labに加わるまでは、ホワイトハウスのSenior Advisor for Mobile and Data Innovationとして、大統領が国家レベルで重要性の高いと判断した新たな技術を活用するための陣頭指揮を取っていた。それ以前には、Peace Corpsのボランティアとしてニカラグアの大手電話会社の立ち上げに関わった。その業績について、World Economic ForumからYoung Global Leaderに認定された。
Bitcoin Core Developer, MIT Media Lab Digital Currency Initiative
XBMC FoundationのボードメンバーとしてXBMC Media Center (現名称Kodi)でプロジェクトマネジャーとしてソフトウェアの開発に携わり、その後Bitcoin Foundationの開発者を経て、現在はMIT Media Labでデジタル通貨プロジェクトの開発チームに所属。Bitcoin Coreプロジェクトでは、ビルドシステム、継続的インテグレーション、自動回帰テストおよび決定性リリースプロセスに焦点を当て、長期スパンでの開発プロセス改善に着目しプロジェクトに貢献。数多くのOSSプロジェクトにもオピニオンとコードソースを提供している。
Associate Dean of Research, USC School of Cinematic Arts
午前の部 基調講演 没入型メディアの過去、現在、未来
University of Southern Californiaで、「Immersive Lab」「Game Innovation Lab」「Mobile and Environmental Media Lab」「Games Institute」といった機関における研究活動を監督している。モバイルメディアやインタラクティブ環境、プレゼンス技術を取り込んだコンピュータと人間のインタラクション設計を専門としている。このほかにも、NASAにおける仮想現実関連の先駆的な研究でも知られる。MITのArchitecture Machine Group(現在のMedia Lab)を卒業。MITやUCLA、UCSD、慶応義塾大学で教鞭を取った。
Chris Schmandt
Director, Living Mobile Group, MIT Media Lab
セッション1 仮想現実とコンピュータインタフェース
MITで1979年に学士号、1980年に修士号を取得したのち、35年間にわたり、スピーチ、グラフィックス、ビジョン、およびタッチ技術を採用したマルチモーダルかつマルチメディアの インタラクティブなコンピュータインタフェースを構築してきた。1985年にはMIT Media Labの設立に携わった。現在はMedia Labの Living Mobile 研究グループでディレクターを務めており、日常的に身に着たり持ったりするようなデバイス技術の研究をしている。
Misha Sra
PhD Researcher, Living Mobile Group, MIT Media Lab
セッション4 リアルとバーチャルの融合はどこまで進むか
MIT Media Labの研究員の傍ら、Robert Wood Johnson Foundationのフェローや、Media LabのAdvancing Wellbeing Initiative の一員でもある。最近2年間はインドの地域問題を解決するためにデザイナーやエンジニアが集まり、年に1度開催される「Annual Design and Innovation Workshop」の実行委員として活動している。研究テーマは、細かく複雑なパラレルワールドを生み出すために物理的な存在を利用する手法や、現実には存在しないものを実体のあるものにマッピングし、あたかも現実であるかのように見せる手法などである。また、時間と空間を固定してある瞬間を切り取るような手法を超えた、具体的な体験の共有方法についても研究している。
David Smith
CEO, Wearality Corporation
セッション3 拡張会話について
最高品質のレンズ技術と堅牢なソフトウェアソリューションの開発を手がけるAR/VR業界のリーディング企業であるWearality社を創業。コンピュータサイエンティストとして20年以上に渡り、技術志向の起業に関わってきた。AR/VRデバイスの業界は急速に発展し、現実世界の体験方法を革命的に変える力を秘めていると以前から見抜いていた。現在は、航空宇宙や防衛技術に関する先端企業であるLockheed Martin社で、Virtual World Frameworkと呼ぶ、Webブラウザを使って没入感のある3次元の仮想空間を他の仮想世界やコンテンツ、ユーザーと結びつける技術の開発にも参画している。
Luis Blackaller
Creative Director, WEVR
セッション2 映画から仮想現実へ
エンターテイメントや科学、デザイン、アート、ビジュアルストーリーテリングなどさまざまな分野のバックグラウンドを持つ。National Autonomous University of Mexicoにおいて優秀な成績で学士号を取得しており、Vancouver Film Schoolにてアニメータのトレーニングを受けた。メキシコのテレビと映画業界でデザイナー、アートディレクター、モーショングラフィックアーティスト、ストーリーボードアーティストとして10年以上の経験を持ち、アカデミー賞受賞映画作品であるAmores Perros, 21 Grams, Babelなどにも携わってきた。2008年にMIT Media LabでJohn Maedaの指導のもと、オンライン・クリエィティブ・ソーシャルシステムと技術的表現、コミュニケーションを勉強し、修士号を取得した。MIT卒業後に、MIT Media LabのNext Billion Networkでプロデューサー、クリエイティブディレクターとして、コミュニケーションと研究プロモーションに関する戦略の選択について設計、監修し、1年間以上ドキュメンタリービデオ撮影チームとウェブ開発チームをリードした。現在はカリフォルニア州のVeniceを拠点としており、仮想空間のデザインとプロダクションスタジオを手がけるWEVR社でクリエイティブディレクターを務める。
武川 洋
ソニー株式会社 DSBG新規事業部門SIG事業室統括部長
セッション3 ソニーがSmart EyeGlassで目指す未来
1987年、京都大学大学院物理工学科を卒業後、「技術で未来を創造する」ソニーのミッションに共感し入社。メカニカルエンジニアとして光ディスクの研究開発から商品設計まで12年に渡り担当。この間、MiniDiscシステムの商品化プロジェクトに参画。ディスクフォーマット策定、メカデッキ設計を担当。1992年、世界初で商品化達成。1994年、会社選抜で米Stanford大学大学院に留学。光学を専攻し1年で修士号を取得。光学に専門性を広げる。1999年、社内大学ソニーユニバーシティの全社戦略提言で最優秀賞を受賞。提言した研究テーマ(ARアイウェア端末)を2004年からプロジェクトリーダーとしてスタート。研究成果を2008年に世界最大のディスプレイ国際学会SIDで発表し採択数の2%に与えられるDistinguished Paper Awardを受賞。同年、グロービス経営大学院にてGMBA取得。2010年からは、開発した技術の事業化を担当。事業戦略立案、顧客開拓を中心になって推進。2012年、世界初の映画用字幕表示メガネを北米映画館に導入。現在は、複数方式によるアイウェア端末の商品開発、事業開発を責任者として推進中。上記以外の主な受賞歴は、2008年Sony MVP, 2009年グロービスアルムナイアワード。また、これまでの登録特許数は300件以上。
稲本 零
AKQA チーフ・クリエイティブ・オフィサー
セッション2 Unforgettable
Creativity誌「世界の最も影響のある50人」、Forbes誌「世界広告業界最もクリエイティブな25人」の1人に選ばれる一方、ニューヨークを拠点に世界を舞台に活躍しているクリエイティブ・ディレクター。高校からヨーロッパ・スイスに留学。大学はアメリカのミシガン大学で美術とコンピューター・サイエンスの同時専攻、好成績で卒業。1996年タナカノリユキのもとで活動開始。1997年からニューヨーク在住。1999年、アメリカの大手デジタル・エイジェンシーR/GAにデザイナーとして雇われ、3年足らずでクリエイティブ・ディレクターに昇進する。2004年10月、欧米大手デジタル・エイジェンシーAKQAのグローバル・クリエイティブ・ディレクターとして所属。2008年にチーフ・クリエイティブ・オフィサーに昇進。現在はAKQAのクリエイティブ最高責任者として、各オフィスを指導している。2007年に行われたインタラクティブ・クリエイティブ・ランキングで、世界のトップ5に選ばれる(トップ25内では唯一の日本人)。2010年、日本人として初めてカンヌ国際広告祭チタニウム・インテグレーテッド部門の審査員に抜擢される。2012年には「Advertising Hall of Achievement」に選ばれる。受賞歴は、カンヌ国際サイバーライオン祭金賞、銀賞、銅賞、ロンドン国際広告祭グランプリ、金賞、銀賞、ニューヨーク・アートディレクターズクラブ金賞など、世界中で多数受賞。また審査歴も多々あり、ニューヨーク・アートディレクターズクラブやクリオ広告祭審査では2007年、2006年に日本人初、委員長を務める。現在ニューヨーク在住。
Ian McDowall
Principal Vision Engineer, Intuitive Surgical Principal, Fakespace Labs